2015年3月19日木曜日

最強の護身術は?

『慨世の遠吠え 強い国になりたい症候群』(鹿砦社)
という本を読んでいます。
この本は思想家の内田樹氏と右翼活動家の鈴木邦男氏の対談なのですが、
第3章「合気道をめぐって」に、面白い記述がありました。

鈴木氏は早稲田大学の合気道部にいたようなのですが、
ここの合気道部は、世界的にもメジャーな合気会系ではなく、
開祖・植芝盛平翁の弟子であった富木謙治先生が始めた富木流合気道です。
富木先生は、講道館創設者の嘉納治五郎先生の弟子で、
嘉納師範が合気道を研究するために植芝翁の道場に送り込んだ人です。

富木先生は、戦中は満州の建国大学で武道や合気道を教え、
戦後は早稲田大学で教授をなさっています。
日本合気道協会を設立して、従来の型武道であった合気道に、
乱捕りを取り入れ、試合のある合気道の普及に努めました。

この富木先生の弟子に大庭英雄先生という方がいて、
この大庭先生に鈴木氏は合気道を教わったといいます。

鈴木氏は、ある日、大庭先生からこう言われたそうです。

「鈴木くん、一番強い護身術はなにか知っているか?」
「合気道でしょ」
「ちがう」
「柔道ですか」
「ちがう。逃げ足が速いことだよ」
(『慨世の遠吠え』P161より)

私も以前、知り合いの戦場のカメラマンからこう言われたことがあります。
「戦場カメラマンにとって一番大切のは、走ること。
走れなくなったら、戦場カメラマンはもうできない」

戦場カメラマンにもいろんな人がいますが、この人は前線を取材する人でした。
たまたま機関銃で掃射されるような現場に居合わせても、
「弾を入れ替える時間があるので、その合間にどれだけ走って逃げれるかが重要なんだ」
と話していました。

こんな話を以前から聞いていたこともあって、逃げ足が速い、走るのが速いというのは、
護身にとっても非常に重要なことだと、私も思っていました。

もし誰か守らなければならない人がいれば別ですが、
自分1人であれば、むやみないさかいは避けて、逃げることがベストだと思います。
たとえば、マラソンランナーの高橋尚子さんみたいな方に暴行を働こうとした男性がいて、
彼が彼女に逃げられたら、追いつけるでしょうか。
彼女ほどのランナーでなくて、市民ランナーでも日頃走っている女性に、
そうそう追いつける男性がいるとは思えません。

これから夏になると、女性誌に痴漢対策といった名目で、
「こう襲われたら、こう攻撃する」といったような特集が組まれることがありますが、
その多くは役に立たないと思っています。
むしろ、重要なのは危険を察知する能力と、逃げることです。

システマの目的は「survive」です。生き残ることです。
だから、逃げてしまっても構わないわけです。
立ち向かうことばかりが勇気ではありません。

危ないところに近づかない、
何かがあったら、すぐ逃げる。
この心構えこそが、護身術には必要――
そんなことを本を読みながら、改めて考えました。

次回のシステマ湘南は3月28日です。


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