2014年6月30日月曜日

脳だって脱力するのは難しい

システマの四原則の一つがリラックスです。
脱力することなんですが、簡単ではありません。

初心者の方からも「脱力するのは難しいですね」とよく言われます。
どうしたらいいかは、普段から無駄な力りみを入れないように
生活するのがいいのではないかと自分では思っています。
しかし、言う易し行なうは難しなのですが……。

『ピアニストの脳を科学する』(春秋社)という本で、脱力について
面白い記述があったので、紹介します。
筆者は執筆当時はドイツのハノーファー音楽演劇大学の研究員で、
現在は上智大学理工学部の准教授をなさっている古屋晋一先生です。

この本では、音楽家、特にピアニストが
脳や身体をどう使っているのか、科学的に分析しています。
プロのピアニストは、小さい時から1日何時間も練習していますから、
常人とは異なる感覚を持ち、やはり脳の使い方も違うようです。

ピアニストはピアノを効率的に弾くために、
身体と脳をエネモードで動かせるように特化しています。
その一つが重力を利用することです。

プロのピアニストとピアノ初心者(習い始めて1年未満)が
どのように打鍵するかを比べた研究が紹介されてます。
打鍵の際には、まず腕を持ち上げなければなりません。

その際、プロも初心者も肘を曲げる筋肉を使っていました。
ところが、その後、初心は腕を落として鍵盤を叩くときにも
筋肉を使っていました。
(肘を縮める筋肉で持ち上げ、肘を伸ばす筋肉で打鍵していました)

ところが、プロは収縮した筋肉を緩めるだけで、
重力に任せて腕を落下させて、打鍵していたというのです。
これが初心者には出来ません。
ただ脱力させて、腕を落下させることが初心者には難しいのです。

 

スポーツや芸事をなさっている方ならば(システマも含めて)、
「リラックスしろ、脱力しろ」と言わた経験は誰にもあることでしょう。
そして、それがいかに難しいことなのか、よく分かっているかと思います。

古屋先生はこう書いています。

〈筋肉というものは、狙った大きさだけ力を発揮するときよりも、
弛めるときのほうが、よりたくさんの脳部位が動くことがわかっています。
意外に思えますが、脳にとっては、筋肉を収縮させるよりも弛めるほうが、
大変な作業なのです。ピアノの先生はよく、生徒に、「脱力しなさい」と
言いますが、もしかすると、言われた脳のほうは、
「簡単に言ってくれるけど……」と思っているかもしれませんね。〉

私も初心者の人に「もっと脱力して」と簡単に言ってしまうのですが、
本当に難しいことなのだと改めて考えさせられました。
システマはリラックスしたり脱力するエクササイズがいろいろとあります。
音楽家の方がシステマをやったら、どんな効果があるのか、興味があるところです。

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