システマでは「カーム(calm)」という言葉よく使われます。
緊張せず、アグレッシブにならず、穏やかにあれ、という意味です。
他の格闘技と違って、構えを持たないシステマでは、
まず相手と対峙して立った時に、この「カーム」を大切しています。
さて、「カーム」は英語ですが、
ロシアでは何と言っているのだろうと気になっていました。
今回モスクワで、アルチョームのクラスとか、大サーシャのクラスに出て分かったのは、
彼らは「スパコーイニイ(cпокоиныи)」という単語を使っていることです。
ロシア語の形容詞は変化します。
スパコーイニイは原形なのですが、「穏やかに」と指示する時に、
「スパコーイ」とか「スパコーイニ」とか言っているように聞こえました。
語尾が正式にはどう変化しているかは、私の勉強不足でよく分かりません。
この「スパコーイニイ」というのは、実は「カーム」ともちょっと違うのではないか。
というのは、ロシア語で「おやすみなさい」は、
この単語を使った「スパコーイナイ・ノーチ」(穏やかな夜を)というんですね。
英語では「グッドナイト」、ドイツ語では「グーテ・ナハト」、
フランス語「ボヌ・ニュイ」、スペイン語「ブエナス・ノーチェス」で、
いずれも「良い夜を」という意味です。
ロシア語でも、おはようは「ドーブラエ・ウートラ」、
こんにちわは「ドーブルイ・ディン」、こんばんわは「ドーブルイ・ヴィーチル」で、
いずれも「good morning」「good afternoon」「good evening」に対応するのですが、
なぜか「おやすみなさい」になると、
「ドーブリ」(良い)から「スパーコイニイ」(穏やかに)になってしまう。
――で、何を言いたいのかというと、
アメリカ人がどれだけ日常で「カーム」という言葉を使っているかどうか分かりませんが、
ロシア人は、毎日のように「おやすみなさい」という言葉で、
「スパコーイニイ」という単語を使っています。
この単語は、すごく彼らにとっては日常語であって、
僕らが考えているよりも、ずっと「穏やかな」というのは日常の感覚の中にあるのかもしれない。
ロシア人にとって「カーム」という感じは、寝る間際の穏やかな感じなのかもしれない。
あと、「スパコーイニイ」を使った成語に「スパコーイナヤ・ソーベスシティ」という言葉があります。
直訳すると、「穏やかな良心」なのですが、意味は「正しいという自信」なのです。
穏やかな、落ち着いた良心が、正しい自信であるというのは、
日本人ならば直観的に分かる気がします。
ちょっとアングロサクソンの感覚とは違うのではないかと。
僕はこの言葉を知った時に、西郷隆盛を思い出しました。
ロシア語をちょっと齧っただけで、
半可知な知識で申し訳ありませんが、そんなことを感じています。
0 件のコメント:
コメントを投稿