2015年8月28日金曜日

「穏やかな」感情

システマでは「カーム(calm)」という言葉よく使われます。
緊張せず、アグレッシブにならず、穏やかにあれ、という意味です。

他の格闘技と違って、構えを持たないシステマでは、
まず相手と対峙して立った時に、この「カーム」を大切しています。

さて、「カーム」は英語ですが、
ロシアでは何と言っているのだろうと気になっていました。
今回モスクワで、アルチョームのクラスとか、大サーシャのクラスに出て分かったのは、
彼らは「スパコーイニイ(cпокоиныи)」という単語を使っていることです。
ロシア語の形容詞は変化します。
スパコーイニイは原形なのですが、「穏やかに」と指示する時に、
「スパコーイ」とか「スパコーイニ」とか言っているように聞こえました。
語尾が正式にはどう変化しているかは、私の勉強不足でよく分かりません。

この「スパコーイニイ」というのは、実は「カーム」ともちょっと違うのではないか。
というのは、ロシア語で「おやすみなさい」は、
この単語を使った「スパコーイナイ・ノーチ」(穏やかな夜を)というんですね。
英語では「グッドナイト」、ドイツ語では「グーテ・ナハト」、
フランス語「ボヌ・ニュイ」、スペイン語「ブエナス・ノーチェス」で、
いずれも「良い夜を」という意味です。

ロシア語でも、おはようは「ドーブラエ・ウートラ」、
こんにちわは「ドーブルイ・ディン」、こんばんわは「ドーブルイ・ヴィーチル」で、
いずれも「good morning」「good afternoon」「good evening」に対応するのですが、
なぜか「おやすみなさい」になると、
「ドーブリ」(良い)から「スパーコイニイ」(穏やかに)になってしまう。

――で、何を言いたいのかというと、
アメリカ人がどれだけ日常で「カーム」という言葉を使っているかどうか分かりませんが、
ロシア人は、毎日のように「おやすみなさい」という言葉で、
「スパコーイニイ」という単語を使っています。
この単語は、すごく彼らにとっては日常語であって、
僕らが考えているよりも、ずっと「穏やかな」というのは日常の感覚の中にあるのかもしれない。
ロシア人にとって「カーム」という感じは、寝る間際の穏やかな感じなのかもしれない。

あと、「スパコーイニイ」を使った成語に「スパコーイナヤ・ソーベスシティ」という言葉があります。
直訳すると、「穏やかな良心」なのですが、意味は「正しいという自信」なのです。
穏やかな、落ち着いた良心が、正しい自信であるというのは、
日本人ならば直観的に分かる気がします。
ちょっとアングロサクソンの感覚とは違うのではないかと。
僕はこの言葉を知った時に、西郷隆盛を思い出しました。

ロシア語をちょっと齧っただけで、
半可知な知識で申し訳ありませんが、そんなことを感じています。

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