2015年2月8日日曜日

ロシア人の名前の不思議(「暗殺教室」より)

最近は漫画でシステマが出てくることも多いです。
『週刊少年ジャンプ』の人気作品「暗殺教室」でシステマが取り上げられた時も、
仲間うちでは話題になりました。

「暗殺教室」1巻ぐらいしか読んでいないし、あまり詳しくないのですが、
先日、たまたまアニメの同作品を見ていたら、スラブ系の女性暗殺者が出ていました。

その暗殺者はイリーナ・イェリビッチ先生。
この名前で、ロシア人だと思った人もいたのではないでしょうか?
残念ながらロシア人ではありません。
それはなぜか? というわけで、ほんの少しロシア人の名前うんちくを。

例えば、先日の全豪オープンで優勝したセルビア人のジョコビッチ選手。
サッカーのストイコビッチもセルビア人ですが、
このようにスラブ系では「~ビッチ」の姓は少なくありません。
これは「~の息子」という意味で、
ジョコビッチならば「ジョコフの息子」、ストイコビッチならば「ストイコの息子」で、
転じてそれぞれの「~の子孫」的な意味だと思います。

ところが、ロシア人の場合「~ビッチ」という姓はないようです。
「えっ、でもロシア人の名で『~ビッチ』で聞いたことがある」という人がいるでしょう。
それは「姓」ではなくて「父姓」と言われるものです。

ロシア人の名前は正式には「名前・父姓・姓」の順番なのです。
「~ビッチ」は上記したように「~の息子」という名前ですが、
たとえば、現在、ロシア大統領のプーチンの正式な名前は、
ウラジミール・ウラジミーロビッチ・プーチン
意味するところは、プーチン家のウラジミールの息子のウラジーミルとなります。
亡くなったボリス・エリツィン元大統領ならば、その正式名は、
ボリス・ニコラエビッチ・エリツィン=エリツィン家のニコライの息子のボリスです。

■女性の場合は「~ブナ」

では、女性はどうなるかというと「(父)~の娘」となります。
たとえば、テニス選手のマリア・シャラポワの正式な名前は、
マリア・ユーリブナ・シャラポワとなります。
シャラポフ家のユーリの娘のマリア、という意味です。
「~の娘」の場合は「~ビッチ」ではなくて、「~ブナ」となるんですね。
もうひとつ、フィギュア選手のリプニツカヤだったら、
ユリア・ヴィラチェスラヴォブナ・リプニツカヤ=
リプニツキー家のヴィラチェスラヴォフの娘のユリアという意味です。

ここで「シャラポワ→シャラポフ」「リプニツカヤ→リプニツキー」と
姓が変化したことに気づいた人がいるかもしれませんが、
ロシアでは、女性の姓は最後が「A」の音に変化します。
プーチン(夫)→プーチナ(妻)
エリツィン(夫)→エリツィナ(妻)
ドストエフスキー(夫)→ドストエフスカヤ(妻)
トルストイ(夫)→トルスタヤ(妻)
女性の場合、マリヤ・ユーリブナ・シャラポワのように、
それぞれの名の語尾がAの音で終わるようになっていて、やさしい響きになっています。

この名+父姓はまだ親しくない場合や公式な場などで使われることが多いようで、
ロシア同士ならば、たいてい相手の父姓を知っているようです。
ただ、外国人にち説明するのは面倒なので、海外では名+姓だけを名乗っています。

日本に何度も来日しているシステマのヤング・マスター、ダニイル氏の場合、
確認したことはありませんが、正式名称は、
ダニイル・ミハイロビッチ・リャブコ=リャブコ家のミカエルの息子のダニイルのはず。

ここまで読んでくれた方は、
冒頭の「暗殺教室」のイリーナ先生がロシア人ではないことが分かるはず。
もし、彼女が学校という公式の場で父姓を名乗っているならば、
「イリーナ・イェリブナ」になるはずで、「~ビッチ」と名乗っている以上、
それは姓であって、ロシア人はそのような姓はないようなのです。

0 件のコメント:

コメントを投稿